スモークハウス白南風さんのベーコン&ソーセージを食べられたことはありますか?
冷蔵コーナーに並ぶちょっと高価だけどファンの多い一品。
一度このおいしさを知ったら他のは食べられない…とリピートされる方がほとんどではないでしょうか。
私も時々いただいていましたが、スモークの香りがとってもやわらかくて、お料理に使うとその香りが出汁のような役割をしてくれて、なんでも美味しくなってしまう魔法の燻製。
いったいどんな場所でどんな方が作られているのだろう?と妄想を膨らますことしかできませんでしたが、今回有難いことに直接お会いしてお話を伺うことができました。
添加物が多い食品の代表格、とも言えるベーコン、ソーセージ、ハム…
白南風さんの、発色剤を使わないのに美しいピンク色の燻製のヒミツ、お教えします。
出雲大社から車で走ること数分。ぶどう畑や木々に囲まれた昔ながらの住宅街にひっそりと建つ手作り感あふれるかわいい小屋はまるで秘密基地のよう!
中に入ると目の前に大きなレンガ造りの釜が。煙のにおいがプンプンするのかと思いきや、ほんのりスモークの香りはしつつもとても空気がよく、深呼吸したくなる感じ。
壁には山尾三省さんの「火を焚きなさい」の詩。
笑顔の素敵な奥様が、おいしいナシとお茶でもてなしてくださいました。
『白南風(しらはえ)』とは漁師言葉で、梅雨明け直後の少し乾いた風のことで、この頃産卵を終えたトビウオ達が日本海にも一斉にやってくるのだそう。
1985年、このトビウオの燻製作りから長い長い火と向き合うご主人青木さんの職人の道が始まります。
市販のベーコンやソーセージの原材料を見てみてください。
お家で調理する時には使わないようなワケの分からないカタカナの添加物がズラーッと並んでいますね。
その役割は、防腐効果をもたせたり、生グザみを消したり、スーパーに並んだときに「おいしそう」に見えるように発色剤を使ったり…もうこの食べ物が何者なのか解りません。
白南風さんの商品を見てみると、原材料は「豚肉・塩・胡椒」のみ。
当初、大手スーパーなどにソーセージの営業に行くも、きれいなピンク色のプリプリジューシーなソーセージが常識になっている中、青木さんの作る「本物のソーセージ」の味はなかなか受け入れられず、売り込みにずいぶんご苦労したそう。
たった3つの材料だけでこんなにも美味しい燻製が出来上がる裏には、想像を絶する職人技が隠されていたのです。
そのこだわりと作り方は…
・原料の肉や魚はすべて地元島根県産のもの。燻製にする原料は鮮度が命。
・味付けをシンプルに塩・胡椒のみとしているのは、燻製本来の個性的な風味を引き出すため。
・燻製に使うのは原木のみ(チップは香りが強すぎる)。密度の高い原木を乾燥させて使うことで、時間をかけてゆっくりゆっくり温度を上げて燻すことができる。ベーコンは、ナラの木に、甘い香りを放つ桜をブレンド。原料によっては木の種類を変えたりしている。
・燻製作りで大切なのは「温度」「煙」「時間」のバランス。
Step1: 前日に塩抜きし、冷蔵庫で寝かせた後、水抜きする(約17時間)
Step2: 吊るしてスモーク。まずは38~40度で煙をあまり出さない状態で表面乾燥させる(約1時間)
Step3: 58~60度でじっくりじっくりスモークする(約6時間)
Step3のこの間もずっと、火の前で温度や火加減を調節。
その火力によってきれいなピンク色の発色を促すのです。ここに職人技あり。
子供の頃から火と寄り添った暮らしをして来られ、火山写真家という経歴もあるほど火が好きだという青木さん。
だからその気の遠くなるような長い時間も、きっとドキドキ、ワクワクしながら優しく火を見つめておられるのでしょう。
独特の語り口調で、ゆっくりと熱く語ってくださった青木さん。
とにかく印象的だったのは、本当に火が好きなんだな~というのが伝わる楽しそうにお話してくださる姿。
火は灯っていませんでしたが、何だか焚き火を囲んで人生論を聞かせてもらっているような穏やかな時間でした。
細かなことまで惜しげもなくすべてお話してくださった青木さん。
貴重なお話を本当に有難うございました。
そんな白南風さんの30年間の知恵と技、そして火への愛と敬意がたっぷりつまった燻製。
ベーコンは、スライスしてこんがり焼き目をつけてサンドイッチにしても美味しいですし、ちょっと「厚め」に細切りにして、パスタ、チャーハン、炒め物などに入れると、絶品料理に変身!肌寒い季節には、ベーコン、ソーセージともにポトフなんかに入れると最高です。
現在は奥様と甥っ子さんと3人で、少しずつ丁寧に手作り燻製の味を守っておられます。
そのため、入荷も少量ずつ。欠品のこともしばしばですが、ぜひ皆さまも「煙がごちそうの本物の燻製」おためしください。
スタッフ 山本なぎさ